冬になると食べたくなるものシリーズ② 留萌市・田中青果の「やん衆にしん漬」

冬になると食べたくなるものは、北海道にあります。

今回取り上げるのは、留萌市・田中青果の「やん衆にしん漬」です。

「やん衆」で賑わっていた時代の留萌の伝説・伝統が「にしん漬」で蘇る

「にしん漬」は、群来(にしんの大群)が見られた、にしん漁全盛時代、北海道・留萌に集まってきた「やん衆」と呼ばれる海の男たちが「にしん番屋」で作っていたのが全道的に広まったものとされています。キャベツや大根の甘みと「身欠きにしん」の渋みが麹の助けでまろやかに熟れ合わさった漬物は、北海道ではなじみが深く、冬の保存食として重宝されてきました。

にしんは昭和30年ごろを境に北海道の日本海で獲れなくなりましたが、にしんの優れた加工技術は当地に受け継がれています。この留萌で仕上げられた上質の身欠きにしんと野菜問屋を営む田中青果のキャベツ・大根が出合い、「やん衆にしん漬」が生まれました。

しかし、販売に至るまでは歳月を要し、苦難の連続でした。

田中家の味とも言える「おばあちゃんのにしん漬」が美味しさの原点です

田中美智子さんはお父さんの転勤により一時当地を離れますが、生粋の留萌っ子です。銀行勤めをし、田中青果の欽也さんと結婚。この嫁ぎ先のおばあちゃんが漬けていた田中家の「にしん漬」が美味しくて、作り方を教わり、商品化したいと思いました。しかし、レシピを聞いてその通り作っても、おばあちゃんのように美味しくはなりません。たまにできる時もありました。最初は良い味なのですが、時間をおくと酸っぱくなったり、ふくらんで味が変わったりして、すぐダメになります。

「途中で先代から作れないのならやめたっていいんだぞ、と言われましたが、八百屋にとってこの『にしん漬』は希望の光になるような気がして、作り始めた以上、途中で投げ出すことはできませんでした」

欽也さんと共に夫婦で日夜研究に明け暮れ、この頃は死に物狂いで日々試行錯誤の繰り返しだったと言います。

受け継ぐことで昔の味が一層輝く。田中青果2代目ご夫妻の苦難の日々

「その後、10年目に1回いいものができました。これだ!この味だと思いました。しかし、残念ながらなぜできたのかわからない、偶然の産物だったのです」

しかし、できたことは自信になりました。五感を研ぎ澄まし、「にしん漬」のすべてに神経を集め、「成功の理由」を追究しました。そうした年月を重ねるにつれ、「にしん漬」の美味しさの秘密は、菌と温度の関係にあることが徐々にわかってきました。

「寒いところから暑いところへ持ってくると、菌が活性化し、動き始めるのです。そのメカニズムがわかると、次第に要領をつかみ、温度帯を調整し、菌の発酵をうまくコントロールする方法を会得できるようになりました」そして、念願の田中家の「にしん漬」が完成したのです。この「にしん漬」を作れたことにより、ほかの漬物もすべて上手に作れるようになったそうです。

「にしん漬」は生きている。五感で発酵をとらえ、美味しさの極致へ

「私は『にしん漬』を生き物としてとらえています。目で見たり、匂いを嗅いだり、耳をすましたりして。五感で観察すると、発酵の『ぷくっ』という音が聞こえるのです。『にしん漬』は封を開けた時に発酵が始まるように作っているのですが、こういうことができるまで15年もかかりました。いや、実際は主人が私より前に「にしん漬」を手掛けていたので、通算で25年の結晶ですね」

田中家「やん衆にしん漬」の特徴は、キャベツ、大根、にしんの具材が大きいこと

製造元や各家庭によって「にしん漬」の材料や作り方は異なると思いますが、田中青果では次のような材料を使い、「やん衆にしん漬」を作っています。

キャベツ、 大根(干したものか塩漬けしたもの)、ニンジン、身欠きにしん(本乾)、天然塩、米麹、南蛮。大根はなたぎりにし、キャベツもバサバサと大きく切ります。

キャベツは越冬キャベツで有名な和寒産のもの。にしんは世界で最も旨いと言われるベーリング海産のものを留萌の水産加工技術で仕上げた本乾身欠きにしん。大根も道内産の地物にこだわって使用するなど、オール北海道の材料を麹で漬け込み、野菜の乳酸発酵と麹の甘味、にしんの旨みを逃すことなく押し込めます。

季節やその時の状況により変化しますが、漬け始めから完成まで3週間から1か月半。2週間は温度帯に左右されると言います。

保存料、着色料を一切使用せず、加熱処理もなし。漬物本来の持つ自浄作用(乳酸発酵による雑菌効果)を最大限活かした造りなので、漬物自体が生きています。「やん衆にしん漬」はこのような独自製法で、封を開けた瞬間から発酵が始まり、4時間後が一番美味くなるよう作られています。

保存方法は、要冷蔵・冷蔵庫で保存。賞味期限は製造日より8日間となっています。

JR留萌駅前・早道通り、観光にお越しの節はぜひお立ち寄りください

田中青果は昭和33年創業。2代目欽也さんのおばあちゃんが野菜の行商人だったことがルーツ。

現在、「やん衆にしん漬」を販売しているお店はJR留萌駅すぐ間近の早道通り沿いの一角にあります。隣り合うようにフルーツと花のお店も経営しています。

野菜を美味しく食べてほしいという思いから始めた田中青果の漬物づくり。「やん衆にしん漬」の看板がある漬物屋さんには、様々な種類の漬物やピクルスがうまそうに並んでいます。

美智子さんは野菜ソムリエとも呼ばれる「ジュニアベジタブル&フルーツマイスター」に認定され、ピクルスを始め、新たな伝統食になるかもしれないオリジナルの味を新しく生み出そうとしています。

また、美智子さんは「唎酒師」にも認定されています。この資格も愛するにしん漬けのためのもの。

「にしん漬が一番合うのは、日本酒です」と美智子さんはきっぱり。

その日本酒の中でもさらにどんなお酒が「にしん漬」に合うかの研究に時間を惜しみません。

基本的には対面販売がメイン。道外の百貨店物産展へも精力的に出店したり、講演会を行ったりして、「にしん漬」の普及活動に広く取り組んでいます。

寒さを感じると恋しくなる「にしん漬」、食べたい味、感動の逸品がここに

寒くなると「にしん漬」が食べたくなります。しかし、祖母から母へ、母からわが子へ。我が家の「にしん漬」を令和の時代まで受け継いでいる家庭は、どれほどあるでしょう。

核家族世帯の増加や住宅事情、食生活の変化などにより、「自宅で漬物を作る」ということ自体が行われにくくなってきています。だからこそ、田中青果のように、「昔食べたことがある」「うちで食べていたのと同じ味だ」と喜ばれる漬物屋さんはとても貴重なのです。特に昭和の年配者には郷愁誘うありがたいお店になっています。

昭和、平成、令和へと時代が変わっても、変わらない、過去と未来へつなぐ感動の味がここにあります。

「11月頃になると、にしん漬を体が求めているのでしょうか。寒さを感じたら、注文が増えますね」と美智子さん。

「にしん漬」は、北海道のソウルフードであり、冬を告げる風物詩なのです。

詳細・お求めは、「田中青果」ホームページ

http://www.yanshu-tanaka.co.jp/

※記事引用元:「じもふる」(現在、サイト休止中)

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